安部公房 ――


『砂の女』 新潮文庫 (237P \427)
★★★★★

 砂の底の一軒家に閉じこめられた男と女。男は脱出を試みるが、流れ落ちる砂の抵抗によりことごとく失敗。やがてその運命を受け入れざるを得なくなる。ありえない世界を実在するかのごとく思わせてしまう、これが彼の真骨頂。20数ヶ国語に翻訳され、フランスでは最優秀外国文学賞を獲得。国際的前衛作家安部公房の代表作と言われている。けど、とても読みやすくて、一見普通の作品なので、あまり彼らしくない作品だとわたしは思う。日本では読売文学賞を受賞した。


『箱男』 新潮文庫 (219P \388)
★★★★☆

 ダンボール箱を頭からすっぽりかぶって暮らしてみたいと、あなたは思いませんか?そこからのぞきみればこの世は別世界。そのために必要なダンボールの細工方法から心がけまですべて、この本は親切に説明してくれます。アブノーマルでマニアックな安部公房ワールドへようこそ!


『壁』 新潮文庫 (265P \427)
★★★★☆

 ある朝、突然自分の名前をなくしてしまったぼくは、病院の待合室で読んだ雑誌の中の景色を盗み、動物園のラクダを吸い込もうとして私設警察に逮捕されそうになり、名刺に笑われ、靴やネクタイに攻撃され、マネキン人形と恋をし、解剖されたら、そこは壁だった。カフカを超えた不条理の世界。戦後文学賞・芥川賞受賞。


『けものたちは故郷をめざす』 新潮文庫 (249P \350)
★★★★☆

 敗戦前夜、満州を逃れ徒歩で故国日本を目指す男。正体の分からぬ不気味な相棒と、地獄の行進が始まる。大岡昇平の『野火』を彷彿させる、かなりシリアスな話。人間は極限になると正体をあらわす。


『第四間氷期』 新潮文庫 (279P \427)
★★★☆☆

 やがてくる氷河期に備えて水棲人間を作ろう、という近未来SF。例によってややマニアックで、並のSFに飽きているという人におすすめする。ラストは「安部公房版人魚姫」といった風で、かなりドラマチックで印象的。


『人間そっくり』 新潮文庫 (183P \350)
★★★☆☆

 ぼくの部屋に突然やってきた火星人と名のる男。単なる気違いか、火星人そっくりの人間か、はたまた人間そっくりの火星人なのか?笑える。まわりの人間がみな火星人に見えてきてしまう。楽しめるSF長編。


『燃えつきた地図』 新潮文庫 (324P \505)
★★★☆☆

 失踪した男の調査を依頼された探偵が、追跡を続けるうちに手がかりを失い、自己も失っていく話。追うものが追われ、ミイラ取りがミイラに。小説としてはよくある内容も、この人が書くとひと味違う。


『水中都市・デンドロカカリヤ』『無関係な死・時の崖』『R62号の発明・鉛の卵』 新潮文庫 (268P \388, 275P \427, 292P \388)
★★★☆☆

 実験的で前衛的。ナイスな発想に富んだ短編集。純文学もあればSFもある。どれから読んでも楽しめる。


『カーブの向う・ユープケッチャ』 新潮文庫 (261P \388)
★★★☆☆

 『カーブの向こう』は『燃えつきた地図』につながる短編。『ユープケッチャ』は『方舟さくら丸』に。『チチンデラ ヤパナ』は『砂の女』の原型。という安部公房ファンは必読の短編集。こっちを先に読むか、長編からか。


『夢の逃亡』 新潮文庫 (255P \388)
★★★☆☆

 短編集の中ではわたしはこれがいちばん気に入っている。この本は初期の作品集。この人は晩年期になるとかなり作品がアブノーマルになるが、この頃は直球勝負である。特に『薄明の彷徨』という一品はオススメ。


『密会』 新潮文庫 (254P \427)
★★☆☆☆

 妻が閉じこめられた病院には、2本のペニスを持つ医師に、溶骨症の淫乱少女。――超アブノーマルな淫欲の世界。病院に行くのが怖くなる。


『方舟さくら丸』 新潮文庫 (379P \505)
★★☆☆☆

 「さくら丸」というシェルターで核戦争を生き延びようとする男と、ユープケッチャ売りのカップルと、ボランティアじじい集団「ほうき隊」が悶着を起こす。――よくわからない話。


『カンガルー・ノート』 新潮文庫 (223P \388)
★★☆☆☆

 足からかいわれ大根が生えてきた男が、ベッドに縛り付けられたまま、賽の河原へ!――彼らしいブラックユーモアたっぷりで、「死」というものを茶化している。しかしこれが遺作となっただけにあまり笑えない。


『友達・棒になった男』 新潮文庫 (296P \505)
★★☆☆☆

 安部公房は劇団を主宰し、作・演出もしていた。というわけでこの本は戯曲集。割り切って読めば、まあ楽しめる。たまには戯曲でもいかが?


『死に急ぐ鯨たち』 新潮文庫 (238P \388)
★☆☆☆☆☆

 エッセー、評論、インタビューなどを寄せ集めて一冊にまとめたもの。興味はなかったが、これで新潮文庫から現在刊行されているものが全部揃うので買った。安部マニアでない方は読んでも面白くないと思う。


『幽霊はここにいる・どれい狩り』 新潮文庫 (357P \505)
★☆☆☆☆

 これも戯曲集だが、こっちはあんまり面白くない。岸田演劇賞ってのを獲ったらしいので、舞台で見れば面白いのかも。


『終わりし道の標べに』 新潮文庫 (174P \311)
★☆☆☆☆

 処女長編。徴兵を拒否して満州で生きる男の話。『けものたちは故郷をめざす』と対を為すのかも知れない。かなり深く暗く、あまり楽しめる作品ではない。


『笑う月』 新潮文庫 (154P \350)
★☆☆☆☆

 創作なのかエッセーなのかわからない短編集。この人は、朝起きた時、見た夢の内容を忘れないようにすぐ話して録音し、創作のネタにするそうだ。そうやって集めた話をまとめたもの。


『飢餓同盟』 新潮文庫 (219P \350)
★☆☆☆☆

 「飢餓同盟」ってのはいわば左翼団体。彼らが町の権力者達と争いつつユートピア建設を目指すという話。安部公房の小説は本当にあたりはずれが激しく、これは大はずれ。それだけバラエティ豊富ってことだろうが...


『他人の顔』 新潮文庫 (290P \427)
?????

 ケロイドを隠すために他人の顔のマスクをかぶる...という話だと思う。わたしが唯一、途中で投げ出した安部作品。