若き天才ハイゼンベルクの回顧録。読み出してまず抱いた感想は、ドイツ人ってすげー、である。高校生の分際で友達同士で哲学議論とかしちゃってる。物理学者として名を馳せたあとも、ボーアやアインシュタインとの対話など、物理学的内容というよりも、哲学的内容がメインになっている。天才同士の会話を、凡人読者が理解するのは不可能だ。難しい会話はサラッと流し読みして、天才の雰囲気だけ味わうのがこの本の正しい楽しみ方だと思う。数十年前の会話を憶えている記憶力に驚愕するが、文章力も見事なもので、趣味の山歩きの描写などとても美しい。巻頭にはハイゼンベルクが来日した際、理研で仁科芳雄や長岡半太郎らと撮った写真が載っているが、本文には来日時の記述は一切ないのが日本人読者としては残念の極みだ。日本人とは「偉大な出会い」がなかったの?と突っ込むのは、僻みすぎ?後半には、ナチス管理下での原爆開発と、敗戦後の抑留まで書かれていて、なかなか骨太な記録だ。
残念ながら、読み物としての面白さはない。前半は、これまた哲学的な長広舌。後半は、古今の物理学者の文献引用で成っている。学者さんはせいぜい研究材料にしてください。
『現代物理学の自然像』 訳:尾崎辰之助 みすず書房 (197P \2800)
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