景山民夫 ――


『クジラの来る海』 新潮文庫 (237P \400)
★★★☆☆

 くっだらね〜、と褒め言葉を贈りたくなる短編集。ここらへんのナンセンスギャグの巧みさは、さすがテレビ業界で慣らした腕の賜物だろう。笑えるだけでなく、『闇のリング』などはしっかり男のロマンが描かれてるし。現代社会風刺が効いている。ちょっと気になったのは、新興宗教を馬鹿にするネタが何度か出てくることだ。それって、自虐?(笑)


『トラブル・バスター』 徳間文庫 (282P \485)
★★☆☆☆

 景山民夫は話を複雑に書き過ぎる嫌いがある。話をひねってひねって、結局オチは大したことなかったりする。オチよりディテールを楽しむべきとの見方もあるので、ま、好き嫌いであろう。またこの話は、一般人がテレビ業界の裏側を知らない時代(すなわち景山民夫が書いた当初)に読んだら、面白かっただろうなー、と思う。テレビ番組はヤラセと仕込みと身内擁護のみで出来ていることをいまや知っている読者には、目新しさはない。


『遠い海から来たCOO』 角川文庫 (339P \540)
★★☆☆☆

 へ〜。こういう子供だましのファンタジーが直木賞を獲れたのか。悪くはないけど、それほどの出来かなあ...かなり意外。景山民夫といえば、晩年、あやしい宗教にはまって騒動を起こした困ったちゃんだけど、すでにこの小説からも気持ち悪い平和主義者的片鱗が窺える。さらにこのひとの文章は、癖があって、少々読みにくい。良くいえばいかにもインテリタイプな、頭の良さが滲み出ている文章なんだけど、長い文中に名詞の占める割合が多くて、リズムが悪い。


『虎口からの脱出』 新潮文庫 (388P \505)
★☆☆☆☆

 ちんぷんかんぷん。満州事変時の中国が舞台の冒険活劇だけど、そこらの歴史小説よりずっと難しくて、ちんぷんかんぷん。関東軍とか張作霖暗殺とかいきなり語られても、平成の読者は、ついていけない。カーチェイスが始まる後半はちょっとは面白くなるけど、それだって車好き(カーキチ&スピードキチ)でないと、楽しむのは難しい。日本冒険小説協会新人賞、吉川英治文学新人賞をもらった作品だけど、ちんぷんかんぷん。