壺井栄 ――


『二十四の瞳』 新潮文庫 (239P \324)
★★★★☆

 子供の頃に読んだときは、かわいい女の先生と純真な子供達の楽しいお話、という印象しかなかった。今回読んで、戦争の悲惨さと時の流れをテーマにした奥深い哀しい作品なのだと気付いた。小さな島の小さな学校で、小さな人々は時代を懸命に生きている。涙が一筋流れた。日本昔話風の語り調文体もとても雰囲気がいい。


『母のない子と子のない母と』 偕成社文庫 (308P \700)
★★★☆☆

 戦争で肉親を失った女性と少年の、小豆島での暮らしを描いており、反戦メッセージが凄く強い。時代がちょっと違ったら特高から拷問されるレベルだ。最初から最後まで反戦一色の小説なら嫌になったかも知れないが、鑑賞ポイントは他にもあって、美しい日本の原風景、漁村のひとびとの暮らし、子供らの遊びなどがハイブリッドされている。個人的に驚いたのは、田舎村でのプライバシーの無さね。子供らの情報を村人はみんな知っている。都会人は住めない世界ですなあ。芸術選奨文部大臣賞受賞。


『柿の木のある家』 偕成社文庫 (256P \800)
★★☆☆☆

 表題作と他3編。昭和20年代の貧しい市井の暮らしが知れるよい作品だとは思うけど、世界観が暗くストーリーは地味なので、読んでいて楽しい話じゃない。これは児童文学なのか?現代の生活と違い過ぎていて、くず屋や貰いっ子の話をいまの子供が読んでもポカーンじゃね。児童文学賞受賞。