東野圭吾 ――


『白夜行』 集英社文庫 (860P \1000)
★★★★☆

 聞いた風なほめ言葉でごめんなさいですが、こいつは「ノワール(=暗黒)小説の傑作」である。前章で仕掛けておいた謎が一章ごとにあかされ、繋がっていき、怖さと哀しみがだんだんと盛り上がってくる。小さな不満はいくつかある。特に前半は生理的に嫌悪を催すエピソードが多い、とか、特に前半は余計とも思える章がある、とか、終わり方はどーなの、とかだ。それにしても読み応えはバッチリだ。じっくり深くたっぷりどうぞ。明確じゃない悪がミソ。老刑事がシブい。


『名探偵の掟』 講談社 (307P \1553)
★★★★☆

 古今東西の名作推理をおちょくったイカサマ連作に思わず失笑!クリスティやカーなどの本格推理ファンは絶対に読みましょう!それ以外の方は...それなりに楽しめます。

 『名探偵の呪縛』 講談社文庫 (288P \571)
 ★★★★☆

 天下一探偵が活躍する『名探偵の掟』の続編長編だ。今回は“バカミス”ではなく、真面目な“本格”である(でも『掟』を知っていると、ところどころニヤリと笑える)。なにが素晴らしいって、この作品には本格を愛する作者のメルヘンが込められている。極上のメルヘンだ。彼は本格が好きで好きで、でも恥ずかしくて書けなくて、テレ隠しの伏線として前作を書いておいたのではないか。『掟』とセットで是非どうぞ>昔ながらの本格ファン。


『容疑者xの献身』 文藝春秋 (352P \1600)
★★★★☆

 なんて上手に出来たミステリーだろう。感心度179%である。天才数学者容疑者と物理学者探偵の闘いは最高の頭脳ゲームだ。教訓・・・どんな天才でも理論で測れないのは、ひとの感情(特に恋愛感情)である。容疑者x君の「献身」についてはいろいろご意見あるだろうが、x君のような価値観を持った人間も世の中にはいるのだろうなあと思えればいいのじゃないだろうか。少なくとも、『電車男』のオタク愛を純愛物語として有り難がるなら、x君のオタクチック偏愛も純愛として認めてあげないと不公平である。東野圭吾式の安っぽい感動パートは、深く考えずに、さらっと読むに限る。


『どちらかが彼女を殺した』 講談社ノベルス (250P \757)
★★★☆☆

 贅肉を全部落とした純粋な謎解き小説。登場人物はわずかで、心理描写もごく少な目。しかしもちろん手がかりはいっぱい書かれている。誰が犯人かは結局あかされずに終わるが、普通の頭の人なら、普通に読んで考えればわかるかな。


『マスカレード・ホテル』 集英社 (461P \1600)
★★★☆☆

 ホテルで殺人が起きることがわかったら、普通はすぐ営業中止にするでしょ。というわけで設定に無理な点は感じたが、楽しめた。ホテルにいろんな客がやってきて、日常ミステリーのような小さな謎が積み重なっていく構成がナイス。新田刑事がホテルマンとして、いやさ人間として成長していく姿が爽やかだ。山岸尚美の接客がホテルマンとして完璧すぎるので、読んでいて少々鼻白んでしまうのはご愛嬌。

 『マスカレード・イブ』 集英社文庫 (331P \600)
 ★★★☆☆

 前作では、ホテルマンの完璧な"おもてなし"精神が味わえた。しかし今回は、客を金蔓として扱っている様子が見えたり、客のプライバシーを第三者に漏らす場面があり、少々嫌な気分になった。とはいえ、表題作『マスカレード・イブ』はよく出来ている(事件がリアリティには欠けるが、パズルとしてよく出来ている)。新田刑事と、生活安全課の婦警・穂積のコンビが面白い。むしろ山岸尚美とのコンビより相性いいのでは?と思った。

 『マスカレード・ナイト』 集英社 (457P \1650)
 ★★★☆☆

 このシリーズも3作目となり、少々飽きを感じてきた。山岸尚美のサービス精神はさらに過剰になり、もうこの世のものとは思えないレベルに。客のプロポーズを演出してさしあげる場面なんて、不自然過ぎてドン引きだ。とまあなんやかやと不満は感じつつ、東野圭吾はやっぱり巧いので、けっこう楽しめた。今回は堅物ホテルマンの氏原がいい味を出している。これは東野圭吾に限らず近年のミステリー作家の悪い癖だが、謎解きはもっとシンプルにして欲しい。複雑すぎる事件の真相にゲンナリしたが、お洒落な大団円にはウットリできた。このシリーズはやっぱり映画化が相当似合うだろうと思う。読んでいてキムタクの顔がチラチラ浮かんだ。


『幻夜』 集英社 (524P \1800)
★★★☆☆

 このノワール長編には大きな弱点がある。ふたりの、悪の理由が伝わってこないことだ。なぜ世間を敵対するのか、なぜふたりだけは信頼しあえているのかの必然性がまったく見えてこない。特にヒロインに魅力がない。根っからの悪人だったら、もっと頭がいいと思う。しかし事件の描き方は名人芸だ。完全には謎を明かさず、思わせぶりにだんだんと事件の真相が繋がってゆく描き方は名人芸である。


『さまよう刃』 角川文庫 (499P \705)
★★★☆☆

 東野作品の難点は、解かり易すぎることだ。登場人物の心理を、いちいち説明してくれなくてもいいのにと思う。子供向けの童話だってもっと、行間の妙味がある。少年犯罪、そして復讐というせっかく糞重いテーマの作品なのに、読者のイマジネーションが入り込む余地が無いので、非常に安っぽい。とはいえ、ストーリーの面白さはさすがだろう。和佳子の存在と行動が予定調和すぎて邪魔っけなのを除けば、誠と鮎村の使い方がとても上手に感じた。(→誤植情報


『鳥人計画』 新潮文庫 (388P \552)
★★★☆☆

 ぼちぼちの推理小説だ。はじめのうちに犯人がわかって、動機と手段だけを追いかけるところが少々変わっている。題材となるのはスキーのジャンプ競技だ。V字になるちょっと前の日本が弱かった頃の話で、スポーツ科学的なデータもぼちぼち。採点としては及第だ。K点まではいかない。


『夢幻花』 PHP文芸文庫 (476P \780)
★★★☆☆

 柴田錬三郎賞受賞作。東野圭吾はミステリーを書く名人だなと改めて思った。サラサラと一気に読めるし、事件の真相のビックリ感とそこに至る盛り上がりも見事なもんだ。だけど個人的に、東野作品は好きになれないとも改めて痛感した。世界観が軽すぎて、嘘臭くて、夢中になれない。読んでいて時間潰し以上の何物にもならんもの。「夢幻花」の意味に関しては上手だし、勉強になったけど、それだけ。


『麒麟の翼』 講談社 (325P \1600)
★★★☆☆

 へー、お江戸日本橋には麒麟の像があるのか。そして近くには七福神巡りを出来る神社があるのか。東野ファンがこの本を読んで聖地巡礼をしそうである。日本橋周辺の薀蓄が識れて好かった他は、特に感想はない。めちゃくちゃ読み易くて、理解し易くて、一般ピーポーが喜ぶ推理小説とはこういう本なのだろうな。


『パラレルワールド・ラブストーリー』 講談社文庫 (449P \743)
★★★☆☆

 記憶と真実がごっちゃになる“パラレルワールド”に、恋愛と友情の板挟みになる“ラブストーリー”をくっつけた(新しい題材で古いテーマを書いたとも言える)、なかなかにナイスなお話である。構成がよく、主人公が勤務するバーチャルリアリティ研究所の雰囲気がよく、前半はとにかく入れた。オチが見えてきた後半は少々疲れてしまった。感動できる人はしてください。


『トキオ』 講談社 (414P \1800)
★★★☆☆

 自分の死んだ息子が、過去の自分に会いにくるタイムスリップもの。『秘密』よりはクサくなく、起きる事件は軽快だ。東野圭吾が書く感動話としては、こんなもんじゃないだろうか。しかし主人公の拓実くん、バカなガキオトナから、物わかりのいいオトナに、急に変わりすぎ。彼の変わりようこそSFだ。脇を固める大阪人のひとびと(そして外国人のジェシーくん)が気持ちいい存在だった。


『悪意』 講談社文庫 (365P \629)
★★☆☆☆

 叙述型ミステリーである。犯人(?)と、刑事の独白が連綿と続く。悪意に満ちた、嘘嘘嘘..。よくもまあ、推理小説作家って複雑な話を考えるものである(東野くんもそうだし、この小説の登場人物が作家なのだ)。現実には、こんな複雑な事件は絶対にない(笑)。読んだ人が、ハマるか、呆れるか、ですね。


『秘密』 文藝春秋 (415P \1905)
★★☆☆☆

 98年度「このミス」第9位ということで、ミステリーといえばミステリーの、愛の物語だ(人間愛、夫婦愛、親子愛)。交通事故で妻と娘を失った男に起こった奇跡。とてもお手軽に簡単に感動できるという点ではオススメだけど、いかんせん軽すぎるな。しょせんはミステリーなんで、こんなもんなんでしょうか。


『サンタのおばさん』 文藝春秋 (66P \1333)
★★☆☆☆

 なぜ東野圭吾が?絵本である。絵は杉田比呂美。世界初の女性サンタを認めるかどうかで、その年のサンタクロース会議は大騒ぎ?フェミニストのご機嫌を取っているような話である。女性だっていいじゃないかと結論づけておきながら、特例でスカートを履かせたり、化粧が長くてトナカイに顰蹙を買ったり、「やっぱり女は女」的な書き方をしていて、なんだかとんちんかん。


『浪花少年探偵団』 講談社文庫 (305P \533)
★★☆☆☆

 しのぶセンセと6年5組のガキどもが活躍する事件簿。ウリであるはずの関西人ノリはあまり面白くないし、事件ネタも大したことなく、魅力ある作品群ではない。サッパリと殺人事件を書かないで欲しいな。しかも子供らを使って。


『超・殺人事件 推理作家の苦悩』 新潮社 (241P \1400)
★★☆☆☆

 東野圭吾のバカミス大ファンとしては、タイトルを目にした瞬間、買わないわけにいかなかった。昨今のミステリー文壇をおちょくる「コンセプト」は超成功。しかし短編それぞれの「アイデア」が超失敗。おバカではない本格サスペンスとして読める『超予告小説殺人事件』と、SFとして読める『超読書機械殺人事件』以外は、読んでいて恥ずかしくなる素人臭さだ。『名探偵』シリーズにあった、澄んだ皮肉はどこにいった?おとといきやがれ。(←書評マシーン“ショヒョックス”で書いたわけではありません。)


『探偵ガリレオ』 文春文庫 (330P \476)
★☆☆☆☆

 子供だましだ。物理学助教授が科学的に事件を解決していくというコンセプトと、タイトルの良さにだまされてこんなものを読んでしまった自分が情けない。同じく「読んで失敗した」と苦笑するわがミステリーフレンドによると、TV番組『特命リサーチ200X』のノリらしい(わたしは観たことないのだ)。レーザーや超伝導などの面白い理科現象を使って、どうしても事件が書きたかったようです。東野圭吾、策に溺れる。