「シリアルキラー」の「心の闇」を描くとなると普通は、少年が主役と決まっているが、あえて「シリアルキラーおじさん」を描いているのがユニークで、とても面白かった。とぼけた私小説風なのがグッド。いつまでも大人になれないおじさんの心理が素晴らしい。いまも青春を送っていると自覚する大人たちに読んでもらいたい金言のオンパレードだ。普通の終わり方をしてくれれば十分だったのに、妻を登場させた延長戦はまったく余計だったと思う。併録の『ドグマ34』は表題作より以前に書かれたようだが、題材はまったく同じで、原型小説として読むと興味深い。(→誤植情報)
ちょっとSFな感じ?安部公房の前衛や高橋源一郎のポップを読んでいるようで、非常に面白かった。この科白の文学的香りにはどきどきした「あなたも少しは、自分という暗い水の匂いを全身につけた青ざめた鮫から逃れられないようにしなさい」。この作品は佐藤友哉流の日本文学讃歌なのだろう。本好きには涙が出そうないい内容だ。万年筆やノートなど、文房具オタクの心もちょっとくすぐってくれるのが嬉しい。しかし展開がちょっといい子ちゃんに過ぎたかなという嫌いはある。かっ飛び感がもう少しあると好かった。三島由紀夫賞受賞。(→誤植情報)
玉川上水で死んだはずの太宰治が現代に転生する話であるが、面白い。知り合った女とすぐに心中しちゃう太宰のクズ男っぷりに、ニヤッとした。お茶らけシーンが笑える他に、真面目な部分もあって、ちゃんと太宰っぽい文体が光っている。太宰の死後に書かれた坂口安吾の『堕落論』を転生した太宰が読むシーンと、芥川賞パーティーに潜入した太宰が一席ぶつ内容なんてなかなかに勉強されていて、感心感心。
『転生!太宰治2 芥川賞が、ほしいのです』 星海社 (308P \1450)
稀代の駄目男・太宰治が実に見事に描けている。前作ほどの盛り上がる展開はないけれど、しっとり静かで、却って読み応えがある。ラノベの皮を被ってはいるが、実はこの本はかなりの純文学なのではなかろか。太宰治が『カメラを止めるな!』を観て感激するくだりがあるのだが、映画を観ていないと意味不明瞭だし、映画の出来をあまりに褒めすぎな点は気に入らんかった。
ミステリーだかホラーなんだかわからない展開が楽しい。読者の予想を裏切ってくれる快感。ちびまる子ちゃんに登場する野口さんみたいなキャラの見船さんが大好きだ。ややもするとシリアルキラーを茶化しているような、けしからん世界観であるものの、殺人者の心理ってのは案外こんなものかも知れんぞ。フザケテル佐藤ワールド、嫌いじゃない。でもなんで時代設定を昭和の終わりにしたのだろう。
いかにもメフィスト賞受賞が納得出来るぶっ飛び系ミステリー。だけど舞城王太郎や真藤順丈ほどはぶっ飛んでいないので、楽しみ易い。そこはかとない文学の匂いがするところが佐藤友哉の魅力だろう。思わず真似したくなる洒落た比喩表現も多し。19歳でこれを書けたとは、感心感心。しかしクライマックスのぐちゃぐちゃには疑問を感じなくはない。好き嫌いあるだろうね。少なくともわたしは、この「鏡家サーガ」シリーズは個人的好みじゃないので、もう読まないと思う。
短編集。いずれも相当に悪趣味でグロい話だが、短編集だから良かったのだと思う。長編で書かれた日にゃ、毒気に当てられて投げ出すところだ。それが証拠に、6編中最も長い表題作のグロさにはついていけなかった。逆に最も感心出来たのが『死体と、』の上手さ。『死体と、』にはちゃんと、死への愛情と優しさがある。他の短編にももうちょっと愛が欲しいところなんだよね。
現実離れが過ぎて、ちょっとついていけなかった。姥捨てされた老婆たちが生きているところまではいい。しかし羆と格闘するに至っては、ありえねえだろと思ってしまう。陰惨な内容繋がりで『バトル・ロワイアル』を思い出したが、あれはあれでバトル・ロワイアルなりの正義や友情があって大変面白かったのに対し、『デンデラ』では老婆同士が殺し合う必然性が感じられない。この作品には、作品としての哲学が足りない。
「読者への挑戦」が挿入されるから、真面目なミステリーなのだろうと思いきや...フザケンナという感じだ。真剣に推理して損した。少年探偵に向かない事件どころか、大人読者には向かない小説だ。ライトノベル臭が満載なのはいいとしても、出てくる人物がみんな薄っぺらで、佐藤友哉は少年主人公を描くのに向かない。
内容の暗さもさることながら、二段組みでなおかつ改行がないという形式(すなわち字ばっか)が読みにくさに拍車を掛ける。若者の閉塞感を描いている意図はわかるけれども、住んでいる北海道が田舎だからとか、世の中が悪いとか、すべてまわりのせいにする生き方は間違っていると思うぞ。読んでいて気分がよろしくない。
『1000の小説とバックベアード』 新潮社 (254P \1500)
★★★☆☆
『転生!太宰治 転生して、すみません』 星海社 (285P \1400)
★★★☆☆
★★★☆☆
『放課後にはうってつけの殺人』 集英社 (262P \2000)
NEW!
★★★☆☆
『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』 講談社文庫 (459P \714)
★★★☆☆
『子供たち怒る怒る怒る』 新潮文庫 (352P \514)
★★★☆☆
『デンデラ』 新潮社 (331P \1700)
★★☆☆☆
『少年探偵には向かない事件』 星海社 (259P \1200)
★★☆☆☆
『灰色のダイエットコカコーラ』 講談社 (224P \1800)
★☆☆☆☆